ドゥマガット族の小学校でSDGsを考えた

今週土曜日(2020年10月17日)のGAIA GAYA にゲストとしてお招きしているMark Napaoさんが2017年に創設したSOLAR HopeというNPO(フィリピンの未電化地域にソーラー発電装置とソーラーランタンを導入することから始め、教育や生活向上支援をしています)が支援しているコミュニティの一つ、Dumagat族が住む地域(リサール州タナイ町)を訪ねました。GAIA GAYA ゲストの方の活動の現場となっているコミュニティをGAIA GAYAチームとしても実際に肌で感じてみたかったからです。

Ruel, Rawang小学校のRandy先生、GAIA GAYA コアチームのMartinと奥さんのGi, 私

「SDGsをみんなの自分ごとにしよう」ということを合言葉に主に啓蒙活動を5月に始動させたGAIA GAYAも10回目のセッションを迎えようとしています。SDGsのNo. 7 (エネルギーをみんなにそしてクリーンに)と SDGs No. 11 (住み続けられるまちづくりを)に関連する取組みをしているSOLAR HopeのMarkさんとのセッションを前に、未電化地域に暮らす少数民族Dumagat族のコミュニティの小学校を訪ねる機会を得ました。

コロナ禍で移動制限が7ヶ月に及んでいるフィリピンで、全国の公立学校において未登校の授業が10月5日に開始されてから1週間というタイミングでした。(ドゥテルテ大統領は、ワクチンができるまで対面授業はやらないと言っています。)

訪問した公立小学校は、幼稚園年長組レベル(キンダー)から小学6年生までの7学年で209人の生徒が在籍する小さな学校です。6人の先生たちのほとんどは20代と30代で、44歳のランディ先生がリーダーとしてみんなをまとめています。

その地域には、携帯電話のシグナルも届いていないし、もちろんインターネットもありません。電気は、小さなソーラーパネルを屋根に設置して、電灯をつけられるようになっている家がSOLAR Hopeのおかげでここ数年徐々に増えてきているという状況ですが、まだ全ての家には届いていません。

屋根の上に小さなソーラーパネル(左)を設置し、家の中にレギュレーターが設置されます。こちらの家では、土間と2つの寝室に3つのソーラーランタンが設置されていました。「夜も勉強できるというのが大きなメリット」とみんな口を揃えて言っていました。
先生たちが案内してくださって、近所のご家庭を訪問してお話を聞かせていただきました。
左上:教室の壁にあった生徒数リスト。10月6日で207人。訪問した13日には二人増えて209人とのことでした。
倒産した私立学校からこの公立小学校に転入した生徒が多いため、去年より少し生徒数が増えたそうです。
そのほかの3枚;対面授業をしないので、1週間分の教材を毎週月曜日に生徒のいる各家庭に配布します。学区内の7つの地区の家庭が教材のピックアップポイントになっていて、その地区の子供達/家庭はその家から毎週月曜日にその週使う教材をピックアップします。

数時間という短い滞在の中で、何がわかったのか、偉そうなことは全く言えないですし、そこでみたことがどこまで現実/真実に近いのかもわからない・・・という前提であえて感じたことを書いてみます。今回お話しすることができたのは、小学校の先生たち七人と、周辺に住む方々4、5世帯のみなさんです。

生活が大変だとか、苦しいとか、不満の声などは全然ありませんでした。初めて会った人にそんな話しないのかもしれないけど・・・ でもみなさんとても穏やかな表情。
左上:野菜を頭に乗せて・・・お昼ご飯のおかずになるそうです。右上:自宅学習用の教材の配布ピックアップポイントのお宅のお母さん(右)と打ち合わせする先生(左)。左下:以前は私立学校で教えていたけど、公立学校に移ってきたという先生にいろいろインタビュー。実は公立学校の方が処遇がいいことと、生徒たちの学びへの貪欲さが公立学校のほうがやりがいを感じる理由とか。右下:お父さんと娘さんにインタビューするMartin。ちなみに、この地区はコロナ感染者ゼロとのこと。

振り返ってみて感じるのは、少なくとも今回の訪問では、悲壮感や絶望感や苦痛や現状への不平不満や助けを求める声は全くありませんでした。 幸い、お芋や野菜などの食べ物はあって、貧しいながらも平和に、シンプルに暮らしている皆さんでした。インターネットなんて使ったこともなくて知らないので、必要だとも感じていない(欲しいかどうか分からない)そうです。収入源は、野菜を売ったり、サワリ(Bohoという竹を編んで作ったシート状のもので、家の壁素材として使われています)を売ったり、というぐらいだそうです。フィリピンの地方では、海外で働く家族からの送金に頼って生活している世帯もたくさんありますが、今回訪問したDumagat族の住む地域では、海外で働く家族のいる世帯は非常に少ないと聞きました。

ハーシー先生に、子供達はどんな夢や希望をもっているのかな、と聞いてみたら、「シンプルです。ちゃんと学校を卒業して、decent job(ちゃんとした仕事) を得て生活する ことを夢見ています。」ということでした。6年生のアンジェリカちゃんは、学校の先生になるか、HRM (ホテル、レストランマネジメント)関連の仕事がしたいと言っていました。知らない世界のことは夢にならないんだな、と感じました。

とってもシャイなアンドレイくん。

お土産に、私とルエルは子供達が使える鉛筆やパッドペーパーと、悦子さんのご主人が焼いてくれためっちゃ美味しいパンデサル、マーティン達はお米50kgを持っていったのですが、先生たちの間でのダントツで人気はパンデサルだったそうです。

持続可能な開発って一体何? という疑問をかかえてRawang小学校を後にしました。 ものすごく単純化して表現すると、

  • 私たちは「開発」された(発展した)生活をしている
  • 彼らは、未開発/未発展の生活をしている
  • 彼らの生活を、私たちの生活に近づけることが development
  • それを、将来の世代に負担や負の遺産を残さずに実現することが持続可能な開発

みたいなイメージを漠然と抱いていた気がします。

でも、今日ほんの数時間Dumagat族の生活に触れてみて

「発展した」私たちの生活を、彼らの生活に少し近づけるようなアプローチが持続可能な開発の鍵かもしれない、という考え方もありかも・・・みたいな思いが浮かんできました。

でも、「ちょっとだけ見たり聞いたりしたぐらいで何を言ってるんだ、ナイーブだなーアホ!」という自己批判の声が自分の中にあることも事実。 一応はそれに気づいているマインドフルネス。

Markさんと次のセッションの準備のために2回ほど打ち合わせたのですが、今まで3年半3つのコミュニティを支援する活動を通じて学んだことは、「(支援する側の)自分たちが解決策を知っているという考えが誤っていた。」ことだそうです。これと全く同じことを、ミンダナオでCoffee for Peaceという事業(コーヒー生産販売事業を通じた異宗教/異部族間の和平促進)をしている社会起業家のJojiさんが言っていたことを思い出しました。そこで暮らす人たち自身が何をどうしたいのかを自分たちで見つけ出して実現に向けて自分たちで動いていくプロセスを辛抱強く支援することが自分たちの役割だと悟ったということです。

都会暮らしのGAIA GAYA コアチームは持続可能開発のなんたるかをちょっとずつ学びながら、考えながら、気付きながら、迷いながら、間違いながら、行動を開始しました。コアチームのメンバーは、企業や政府機関を相手に、リーダーシップ開発、組織開発、様々なワークショップのファシリテーション、コーチングを仕事として長年やってきたメンバーたちです。プロとしてのその専門スキルをどうしたらSDGsの達成に向けて役立てることができるのか、プロトタイプがGAIA GAYAです。隔週土曜日の午後に開催するオンラインミーティングで、SDGsへの認知度を上げ、行動を促し、コラボレーションのきっかけとなる場をホールドすることで、間接的にSDGsに貢献できるのではないかというプロトタイプです。U理論とシステム思考もベースにしてアプローチを設計しています。

こういう活動のインパクトを定量的に評価することはすごく難しいです。でも、毎回参加者のみなさんが提出してくれる「自分はこう行動します」という宣言の内容や、感想エッセイや、フィードバックコメントを丁寧に読んでみると、参加してくれている人の意識や行動になんかちょっと変化を起こすきっかけになっているのではないか、という手応えを感じることはできます。まだまだ5ヶ月足らず、10回やっただけ。これからまだまだ進化させていきたいです。2030年と、その先のことも考えて・・・